リボンやクイックアクセスツールバーの設定はログインユーザ専用

リボンやクイックアクセスツールバーには、自分が使いやすいようにコマンドやマクロを配置することが出来ます。

例えば、Excelでよく使う「行の追加」は標準のコマンドとして用意されていますが、初期状態ではリボンのホームタブ → セルセクションの「挿入」→ シートの行を挿入、という3段階の操作が必要のため、クイックアクセスツールバーに登録して、1クリックで操作できるようにすると便利になります。

クイックアクセスツールバーにはディスプレイの解像度にもよりますが、よく使われる24インチ前後のディスプレイであれば、Excelを画面フルサイズで表示した場合は60個ぐらいのコマンドやマクロが表示できます。なお、クイックアクセスツールバーは1行のみです。

リボンであればタブ自体を自作できるので、かなり多くのコマンドやマクロの登録を行うことが出来ます。

このように、自分の好みに合わせてリボンやクイックアクセスツールバーにコマンドやマクロを登録することで、Excel作業の効率化を図ることが出来るのですが、この設定はPCを使っているログインユーザーでしか利用できない、という制約があります。

そのため、新しいPCのExcelに設定するには、また1から設定しなおさないといけません。追加コマンドが数個であればそこまで苦になりませんが、100個とか登録していると面倒で仕方ありません。

そこで以下では、リボンやクイックアクセスツールバーの設定を他のPCに引き継ぐ方法を紹介します。


他のPCに引き継ぐ際に必要なファイル

他のPCに引き継ぐファイルは2つあります。PERSONAL.XLSBExcel.officeUIです。

両方を古いPCから新しいPCに持っていく必要があります。PERSONAL.XLSBは無い場合があります。

PERSONAL.XLSB

1つ目のPERSONAL.XLSBは、個人用マクロブックと呼ばれるファイルで、Excelのどのブックからでも共通で使うマクロを登録するために利用します。初期状態ではPERSONAL.XLSBは存在しないため、作成していなければありません。

作成していれば「C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Roaming\Microsoft\Excel\XLSTART」フォルダに格納されています。[ユーザー名]がold_pcであれば、「C:\Users\old_pc\AppData\Roaming\Microsoft\Excel\XLSTART」となります。

なお、PERSONAL.XLSBの作成方法については「個人用マクロブック(PERSONAL.XLSB)の作成方法」をご参照ください。

厳密にいえば、リボンやクイックアクセスツールバーにPERSONAL.XLSBのマクロを登録していない、かつ、PERSONAL.XLSBのマクロは使わない、と断定できるのであれば引っ越さなくてもいいのですが、そんなことはなかなか無いでしょうし、調べたり必要かどうかの判断が難しい場合もあるので、引っ越した方が無難です。

Excel.officeUI

2つ目のExcel.officeUIは、リボンやクイックアクセスツールバーに登録されているコマンドの種類やアイコンや配置位置を管理しています。

パスは「C:\Users\[ユーザー名]\AppData\Local\Microsoft\Office\Excel.officeUI」です。[ユーザー名]がold_pcであれば、「C:\Users\old_pc\AppData\Local\Microsoft\Office\Excel.officeUI」となります。

Excel.officeUIはXML形式のデータで、テキストエディタで開くことが出来ます。

新しいPCのログインユーザー名が古いPCとは異なる場合は編集(方法は後述)が必要です。同じ場合であれば編集は不要です。


PERSONAL.XLSBの編集手順

新しいPCが新品でExcelもインストールされたばかりであれば、古いPCのPERSONAL.XLSBをそのまま使います。新しいPCの「C:\Users\new_pc\AppData\Roaming\Microsoft\Excel\XLSTART」に配置して終わりです。

しかし、引っ越し先のPCに既にPERSONAL.XLSBが存在しており、保存されているマクロを消せないなどで古いPCのPERSONAL.XLSBで上書きできないのであれば、古いPCから持ってきたPERSONAL.XLSBをPERSONAL-OLDPC.XLSBのような別の名前に変更して、新しいPCの「C:\Users\new_pc\AppData\Roaming\Microsoft\Excel\XLSTART」に配置します。

このようにすることで、Excel起動時にPERSONAL.XLSBとPERSONAL-OLDPC.XLSBの両方が使えるようになります。

ただ、このままだとリボンとクイックアクセスツールバーの設定が面倒なので、古い方のPERSONAL-OLDPC.XLSBに保存されているマクロを全て新しいPCに存在していたPERSONAL.XLSBにコピペして移動させて、PERSONAL-OLDPC.XLSBは削除します。


Excel.officeUIファイルの編集手順

以下の手順でExcel.officeUIファイルを配置や編集を行います。なお、新しいPCには既にExcelがインストール済みを前提とします。また、古いPCのログインユーザー名を「old_pc」、新しいPCのログインユーザー名を「new_pc」として説明します。

  1. Excelを終了します。
  2. 古いPCから持ってきたExcel.officeUIを新しいPCの「C:\Users\new_pc\AppData\Local\Microsoft\Office\」に配置します。
  3. 配置したExcel.officeUIをテキストエディタで開きます。
  4. Excel.officeUIを一部抜粋すると、以下のようになっています。
  5. <mso:button idQ=”x1:C:_Users_old_pc_AppData_Roaming_Microsoft_Excel_XLSTART_PERSONAL.XLSB_グリッド線入切_1″ visible=”true” label=”PERSONAL.XLSB!グリッド線入切” imageMso=”GridShowHide” onAction=”C:\Users\old_pc\AppData\Roaming\Microsoft\Excel\XLSTART\PERSONAL.XLSB!グリッド線入切”/>
  6. PERSONAL.XLSBの「グリッド線入切」というマクロをクイックアクセスツールバーに登録していることを管理しています。2か所”old_pc”とあるので後述の手順で新しいPCの”new_pc”に書き換えます。上の見本はクイックアクセスツールバーの設定ですが、リボンの場合も同じ編集手順でOKです。
  7. 古いPCのユーザー名である「_old_pc_」を、新しいPCのユーザー名の「_new_pc_」に置換します。複数ある場合は全て置換してください。アンダースコアで囲っているのはパスを連結した部分を示しています。
  8. 古いPCのユーザー名である「\old_pc\」を、新しいPCのユーザー名の「\new_pc\」に置換します。複数ある場合は全て置換してください。\マークで囲っているのはパス指定部分を示しています。
  9. 編集後は以下のようになります。
    <mso:button idQ=”x1:C:_Users_new_pc_AppData_Roaming_Microsoft_Excel_XLSTART_PERSONAL.XLSB_グリッド線入切_1″ visible=”true” label=”PERSONAL.XLSB!グリッド線入切” imageMso=”GridShowHide” onAction=”C:\Users\new_pc\AppData\Roaming\Microsoft\Excel\XLSTART\PERSONAL.XLSB!グリッド線入切”/>
  10. 編集後のExcel.officeUIを保存します。

これで編集は終わりです。次にExcelを起動したときにはリボンとクイックアクセスツールバーが古いPCの設定が反映されて表示されます。


リボンやクイックアクセスツールバーに登録したら一度Excel終了を

編集自体は上の手順でOKなのですが、Excel.officeUIについて補足です。

Excel.officeUIはExcelを終了するときに、その時点の内容が保存されます。そのため、リボンやクイックアクセスツールバーにコマンドを登録したあとにExcelが異常終了した場合は、その内容はExcel.officeUIには保存されません。

Excelは何かと異常終了しやすいアプリです。

そのため、リボンやクイックアクセスツールバーへの設定を行う場合は、ブックを開いていない状態など、異常終了が起こりにくい状態にしておいて、設定が終わったら一度Excelを終了することをお勧めします